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SilverRainの水忌・風魔(b32238)と葛葉・狭霧(b58633)のブログです。 このキャラ2人が日常会話や日記を綴る、というコンセプトなのでその辺よろしくお願いします。                                                                          +*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+* このサイトに掲載されている作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、作成を依頼したものです。  イラストの使用権は私(管理人)に、著作権は『寛斎タケル氏』『悠貴氏』『濃茶氏』に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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      哀しい…
悲しい…             悲しい…
                   哀しい…              悲しい…
   哀しい…            哀しい…
      
          
 カナシイ…

『愛しい』
 
暗く、深い森の闇の中……。
……黒く深い、底の無い沼の如き湖があった。
その湖畔は静かと言うよりも、他者を排斥し近寄らせず、
かと言って心に隙があるにとっては格好の死に場所であった。

深夜、誰もいないはずのその湖畔…
水の跳ねる音がする。

                       ちゃぷん...
                              ぴちゃん...
                     ......ばしゃっ......
                                ......ざばぁっ......

次第に音は大きくなっていき、やがては何者かが水を掻き分けるような音に変化した。
そして……
……湖畔から、人間に非ざるモノが現れ……
……其の手には、…変わり果てた元人間の抜け殻が……


 


「……湖畔に出るゴースト?」
そう言ったのは、第49代目水忌家当主・水忌 風魔である。生憎と顔は布で覆われていて見えないが、声と物腰からすると女性であろうか。
いや、待て。この長身…もしや男であろうか。
「…はい。もう既に何人もの遺体が上がっています……。」
そんな疑問が浮かんだが、億尾にも出さず、客人は答えた。
風魔はきちんと客人に向けて正座をしていたが、ふいに立ち上がり部屋の隅にあった書棚へと向かった。
訝しがる客人の視線を余所に、ふらふらと所在無さげに、白い手を左右に往復させ、もう一度往復させるとやがて一冊の手帳のような物を引っ張り出した。よく聞こえなかったが、おお、やはり此処に有ったか、などと呟いていた気がする。
その手帳のような物を開き、素早い手つきでページを捲り、やがて目的のページを見つけたのであろう、手を止めてしばらくそのページを眺める。
途中何度か軽く首を傾げながら指でページをなぞり、何かを納得したように頷き、…それを何度か繰り返し、ようやく手帳を閉じると今度は己の懐に仕舞いながら戻ってきた。
静かに腰を下ろし正座をする。
優雅で一切の無駄も無い、流麗とも言える一挙一動には思わず目を奪われてしまう。
「…先程、今後の予定などを確認致した…。…良いでしょう、その依頼、謹んで引き受けまする…。」
「そ、そうですか!それは嬉しうございます!感謝致します、水忌殿!」
感極まって勢いよく頭を下げる客人に、風魔は優しげに笑みつつ改めて依頼の内容を確認する。
「此度のゴーストは、湖の中に棲み、湖畔に近付く者を引き摺り込み殺す、と…。しかも狙われるのは男ばかり。それも、結構な男前の、という条件付き。時間帯は夜。湖は結構な深さであり、水中戦にならぬよう配慮の必要有り。……それでは、次なる日曜の夜…、そちらへ伺うと致そう…。…如何か?」
「はい、一言一句違わず、その通りです。では、場所ですが……」
客人は地図を取り出すと、サッサッと広げていく。
とある県の拡大地図である。客人は胸ポケットからペンを取り出すと、何も無い、森か山だと思われるところに印を付けた。
「……ここです。かなりの森の奥ですが…、案内人を付けますので、ご安心ください。…結構歩きますが、大丈夫ですか?」
「…ふむ、儂は問題は無いが、その案内人とやらは大丈夫か?ゴーストが想像よりも遥かに強かった場合、其の者を守りながらの戦いは大いに不利じゃ。」
「ご安心ください。彼女も能力者―水練忍者です。」
「彼女……女子(おなご)か?」
客人は顔全体に自信の如き色を浮かべ、笑ってみせた。
「ええ、ご安心ください。彼女は強いです、かなり。」

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「……と、いうように、水中を棲家とするリリスのようです。今までにも何人かの能力者に依頼しましたが、結果はどれも……」
先日の客人は、其処まで話すと沈痛な面持ちで静かに首を振った。…どうやら、中々に強敵らしい。
「実はそれだけではありません…。…何とか命を落とさずに帰還した者によりますと、そのリリスは犠牲者達を新たなるゴーストとして使役しているようです。」
「…ゴーストが、ゴーストを使役…?……成程、一筋縄ではいかぬ筈じゃ…」
…金糸が織り込まれた蒼い陣羽織に濃紺の袴といった、およそゴースト退治には似つかわぬ優雅な佇まいの風魔が、隣に立つ青年に話しかけた。
その青年は、風魔に影の如く付き従い、ただ静かに存在していた。漆黒の短髪に、光が当たると赤く反射する漆黒の昏い瞳、病める如くに白い肌。緻密に計算されて作られたかのような顔貌に、完璧な無表情。まるで人形のようであった。
「……そうだな。…油断は禁物…用心が必要だ。」
人形――葛葉 狭霧が静かに口を開いた。少年の如くやや高めの声が、静かに、冷たい空気を震わせる。
主君である筈の者に対して敬語を用いず、しかも諫めているとは。
しかし、風魔は気にした様子も無く、
「ふ…、承知しておる。」
と、笑っているようであった。
「…ところで、……案内人とやらは、未だであろうか。」
「そ、そうでございました!申し訳ございません……!もう少しで来ますので―――…」
「おっくれてすいませんでしたーっ高虎 美鈴(たかとら みすず)只今参上しました!」
客人が慌てて頭を下げるとほぼ同時に、頭上から声がした。頭上といっても、木々の枝や葉が広がるばかりである。
間も無く、頭上から頭髪やら肩やら足やら、至るところに木の葉を付けた少女が降って来た。
…やや釣り目がちの目、燦々と輝く黒い瞳、肩のあたりで綺麗に切り揃えられた黒髪、健康的に赤く染まった頬、……巷で言うところの、美少女である。
さてこの美少女…、忍び装束を身に纏い、その腰には小刀を差している。……一見低脳そうではあるが、その気は只者ならぬものである。
おそらくはこの少女こそが案内人であろう。
客人は美鈴を叱っていた。
「まったく!お前は何度言えば分かるんだ!二度と遅刻するなと言ったろう!」
「しょーがないでしょう、来る途中にあまりにも可愛い鳥がいたものですから。にひひ」
全く反省した様子も無くそう言い放つと、ようやく風魔達に気付いたのであろうか、近付いて挨拶を……
…と思いきや、言った言葉はこれである。
「あのさ、あなたが風魔サン?………ふざけてるの?」
「………。」
「あ、ああっ、何と言うことを!」
「…否、致し方あるまい。このようなものを身に着けている儂が悪かった。」
…確かに、風魔の今の格好を見ればそう言われても仕方ないと言うしかないだろう。
風魔は今、顔を隠す布の代わりとして、某笑顔溢れる動画ではお馴染みの馬の被り物をしていた。いかにも暑そうだ。
「……どうしてそんなものを被っているのかしら?」
「我家の仕来りで、当主は屋敷内や仕事の際は顔を見せる事が出来ぬのでな。許せ。布はひらひらしていて動き辛い。」
「…へぇ、そうなの。よほど自分の顔に自信が無いのかと思っちゃったわ。…まあいいわ、許してあげる。」
美鈴のその言葉に、ホッと胸を撫で下ろした客人であったが――…
「………これを見切れたらねッッ!!」
次の行動には心臓が止まるほど驚いた。
美鈴は目にも映らぬ速さで風魔の背後に回り込むと小刀で抜きざまに斬りつけたのだ。いかなる達人とて見切れるか否か。まさに忍者として相応しい動きであった。
……斬られたと思った瞬間、鈍い金属音が大きく響いた。
よく見ると、小刀と風魔の背中の間には異様に長い、細かい装飾が施された蒼く美しい鞘があった。……風魔は瞬時にイグニッションし、愛刀で防いだのだ。無論、身体も顔も前を向いたままで、腕のみが背後へ回されている。
馬が静かに語った。
「……目など何の当てになろうか?暗闇では目に頼っていることなど出来ぬ…。」
「…!……ふぅーん、中々やるじゃない。でもまあ、私の足を引っ張らないでね……いったぁ!!」
「馬鹿者!!水忌殿になんということを……!!」
「殴らなくてもいいじゃないですかぁ!」
「殴らずしてどうする!むしろ足りないぐらいだ!」
「………もしかして、馬よりもこっちの方が良かったかな?」
風魔は其の様子を見、小声で狭霧に尋ねた。
其の手には、13日の金曜日に現れるという怖い人が被っているような白いマスク。
狭霧はただ、両の目を閉じて無言を貫き通した。

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

下駄、草履、革靴……それぞれが地面を擦り草を踏む音がする。
客人と別れてから――つまり、森を歩き始めてから既に3時間は経過はしていた。
草木が生い茂る地面は多少は踏み固められていたが、それでもやはり足場は悪く、並大抵の者なら一時間程で疲れ果ててしまっているだろう。
美鈴は後方を歩く二人を振り返った。
其の視線には二人とも気付いたが、口を開いたのは風魔のみであった。
「……ふ、安心めされよ…。我らのことは気にせずとも良い。そなたは案内に徹して貰って構わぬ…。」
「…そう。なら、良いのだけど……顔が見えないから、無理してても分からないわね。」
「おや、疑っておられるのか?これでも水忌家当主、そうそう簡単には膝をつかぬ…。」
白いジェイソンマスクの奥から含み笑いが漏れる。(何でさっきとマスクが違うのよ…?さっきの短時間で一体何があったの…!?)
やはり男とも女ともつかぬ――美鈴の予想だと、女――その人物は、何だかとても胡散臭く感じられる。だから、正直信用ならない。何故、上司はわざわざこの人物を選んだのか……。
そう思いながらただ黙々と足を進めていると、やがて目的地へと辿り着いた―――……

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「ここよ。例の湖は。底なしの沼にも見えるけど、しっかりと底もあるし、まあ大丈夫よ。深さはあるけどね。」
もしも水中戦に持ち込まれても何とか大丈夫だ、と言いたいのだろうが、風魔はそれを好く思わぬようであった。
特に水が苦手と云う事はない、ただ単に濡れた服で帰るのが気に食わぬだけである。というか、客人…こと美鈴の上司は水中戦は難しいと申しておった筈だが。どうも上司と部下で意見が食い違っているらしい。
「…で、死体…というか抜け殻ね、…それがあがったのは、あの辺。」
美鈴は湖に背を向けるように立っていたが、身体の向きを反転させると、北北東の方角に位置する水辺を指差した。ダルそうな雰囲気をもって、肩越しに風魔達を見遣るとただ一言。
「行くでしょ?」
と、言った。そしてそのまま右足を踏み出して……止まった。否、止められた。
返答も待たずに歩き出そうとする美鈴を止めたのは、今まで黙していた狭霧である。
「待ちたまえ…。……少し時間を頂けないだろうか。私達は此処に初めて訪れた身、地形は知って置きたい…」
…と言う。
美鈴としてはこんな面倒な仕事はさっさと終わらせて帰りたい、というのが本音である。
すぐにでも退治に入りたいところではあるが、タイセツナオキャクサマ(棒読み)がそう言うのなら従うしかあるまい。
露骨に不満そうな顔をした美鈴であったが、少し悩む素振りを見せるとすぐに許可した。勿論、顔は不満げなままである。
「……分かったわ、いいわよ。ただし、私こんな仕事さっさと終わらせてテレビ見たいの。健司と加奈美の行方が気になるの。だから20分だけあげる。それだけあれば充分よね?……何?何か不満?」
「否、感謝致そう、美鈴殿。………誰だよ健司と加奈美……。(ボソッ)」
「あら、何か言った?」
「ふむ、儂らは何も申してはおらぬ…。…のう、狭霧?」
「……ああ、そうだな。」
「…ならいいけどね。じゃあ、20分後に此処に集合。途中湖に落ちたりする事のないように。じゃあ解散!」
「………遠足か何かか…?」
「行くぞ、靖。」
「お、おう…」
狭霧に袖を引かれ、半ば引き摺られるようにして風魔は歩き出した。

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

もう少しで20分が経過するかという頃、美鈴は元いた位置へと戻る為に歩き出した。
間も無く、二人が帰って来た。時計を見ると、20分丁度である。文句のつけようが無い。それが余計に美鈴には気に食わなかった。
「じゃ、いくわよ。今度は待った無しね。」
サクサクと歩みを進めて行く如何にも不機嫌な背中を見、二人は苦笑した。
既に10m程離れた位置にいる美鈴に追いつこうと歩幅をやや大きくして歩き出す。母に付いていく子供達というよりは、一人で先に行ってしまう子供に手を焼く両親の図、といった様子である。
やがて件の事件現場へと辿り着いた。
「ゴーストが現れる条件其の一。鬱々としていること。其の二。男前であること。理由其の一。ゴーストは絶望が大好き。其の二。元カレはかなりイケメンのプレイボーイ(古い)だったと思われる。以上。質問は無いわね。」
…腕組みをしている美鈴が無言でこちらを見た。無論、品定めをするような視線だ。
まずは狭霧を眺める。
「………ま、申し分なく合格でしょうね。……ふぅん、よく見ると、お人形サンみたいな顔してるのね。嫌いじゃないわ。」
お前の趣味は聞いてねーよ。
と突っ込みたくなった風魔だが、今は当主モード。死んでもそのような事は漏らさない。
次――…と、美鈴の視線が風魔を向いた。やはり不機嫌そうな表情である。
何が言いたいのかは、誰でも分かる……。
「………外せ、と?」
「………別に、…隠したくなるほどなんでしょ?だったらもうイケメン要員はいるんだから、良いじゃない。」
被り物の下で苦笑した風魔であったが、その言葉に反応したのは狭霧であった。
ス、と。
軽い動きで一歩前に出ると、いかにも主君を馬鹿にされたのが気に食わぬとでもいった感じで静かに言葉を発した。
「そのような事は無い。見よ」
…と、風魔の被り物を素早く取り外す。風魔は急に頭を引かれ、「いてっ」と小さく呟いた。
……瞬間、然程興味なさげにしていた美鈴であったが、目を見開いて固まった。
現れたのは、女性の顔である。それも、文句のつけようが無いような。
真っ白い肌に赤い唇。目許は薄く赤い隈取が施されていて、それがまた神秘的である。
「………な、なな、何よアンタ……。やっぱり女なんじゃないの……」
「…む、女子(おなご)ではない、男(おのこ)じゃ。」
「は、はぁ…?…お、男…!?…もしかしてあなた、私のこと馬鹿にしてるの…!?」
…どうすれば信じるだろう、と考えを巡らせている風魔であったが結局良い考えは浮かばなかったようで、諦めたというように苦笑した。
その心から落胆したような困ったような様子を見、ようやく男であると信じたようであった。
「……本当に、男、なのね……。……ふ、ふん、ま、まぁ、随分と化粧をしているようだし、当然かしら?」
「…化粧?…ああ、隈取の事か?」
「………他にもあるでしょ、口紅とか、白粉?」
「……残念ながら、素顔じゃ。」
「は?」
「口紅など塗ってはおらぬし、白粉も何もしておらぬ…。隈取のみ…女中頭の趣味で。」
「…は?なに、それ。じゃあそれが地顔ってこと?はぁ?あなた男でしょ、しかも素顔でしょ。」
「然り。」
「……な、ななななにそれ…!?すごく負けた気分……私女なのに……もてるのに……男に負けるなんて……。……すっごく悔しい……」
両手で顔を覆い嘆く少女は悲壮感と絶望にも近いものに包まれていた。風魔はただただ、不本意そうに、かつ、申し訳無さそうに微笑んでいる。
直後、
           
    『……絶望が……見える……。…あなたも…私と同じ……。…そして…あの人も…』

                       ちゃぷん...
                              ぴちゃん...
                     ......ばしゃっ......
                                ......ざばぁっ......

    『来た…キタのね…でもあの人…チガウ…どうして……カナシイ…カナシイの…』

「!!…え?わ、私!?うそっ!ゴーストに同情されるほど沈んでたってこと?っていうかこんな変な理由で出てきて良いの!?」
「お出ましか…。狭霧、行くぞ…。」
「ん…」
美鈴は「恥ずかしいー」だの、「信じらんないー」などと騒いでいる。
風魔は懐へ手を入れるとやがて一枚のカードを取り出し、それを軽く投げ上げた。
狭霧はコートの裏ポケットから一枚のカードを取り出し、それを顔の横に掲げた。

            『ずっと……、ずっと待ってたのよぉぉぉぉッッッ!!!』

ズズ…、と重い何かが這いずるような不快な音と共に女のゴーストが憎念を飛ばす。
それに呼応するかのように、大量のリビングデッドが現れ襲い掛かる。

                    ――――――― イグニッション……!

其の言葉とともに、二人の身体は光に包まれ、其の手には武器が造形されていく。
風魔の手には先程も見たやたらと長い日本刀……160cmはあろうその刃は月の光を浴びて蒼く輝いている。
狭霧の手には2本の刀が逆手に握ってあった。黒い刃は禍々しく、赤く輝きを放っている。
「…これが…銀誓館の力………。」
騒いでいた美鈴もハッとしたように其の光景にしばし目を奪われたが、慌てて自らも得物を構え迎撃体勢に入る。
背後から飛びつく様に襲い掛かるゾンビの頭を強烈な廻し蹴りで吹き飛ばす。綺麗に飛んだゾンビの頭に向け、素早くクナイで追撃、まずは一匹。
……と、前方と後方から挟み撃ちを仕掛けられようとしていた事に気付くと、2匹が自分の間合いに近付くのを待ち、その瞬間、深く身を沈ませて地面に手を付くと左右に足を開脚するように2匹に蹴りを見舞った。
体勢を崩した所へ、その場で回転するように一閃。これで三匹。
一方、風魔と狭霧はと言うと……。
風魔の剣鬼の如き剣捌き、狭霧の重力を無視したような身軽い体捌き、
そして、何より二人のコンビネーションである。
これは長年共に連れ添った幼馴染だからこそなせる業………まさに以心伝心、一心同体。
お互いの腕や足がお互いのものであるかのように、無駄なく合わせ技を繰り出していく。
狭霧が双刀で敵の攻撃を受け止めると、風魔が其の隙に斬り捨て、
風魔が長刀で敵の動きを封じると、狭霧が素早く刃を突き立てる。
「……ふう、多いな…。……15匹、といったところか…?」
「…そうだな。流石に3人ではキツイか…?…と、靖、後ろ。」
狭霧が風魔の後方から襲い掛かろうとする敵の存在に気付き、忠告をする。まるで「髪にゴミついてるよ」とでも告げるかのように、何気なく。
「ああ、大丈夫。」
…と、風魔はその場で軽く身を屈め敵の攻撃をかわすと、身体を捻り一拍も置かずに首を刎ねる。グラリと揺らいだゴーストへ、更に一閃を。腰から上の半身が、斜め下へスライドするように地面へと落ちた。次いで、下半身が重い音を立てて倒れた。
「………何匹斬った?」
前髪をかき上げながら風魔が尋ねる。
「さて、……何匹だったかな。おそらく、二人合わせてまだ6匹くらいか。」
手袋の甲で顔に付いた返り血を拭いながら狭霧が答える。
風魔は其の返答を聞き、辺りを軽く見渡し、
「あー…、後、7匹か。」
と呟いた。
瞬間、素早く後方へと飛び退る。先程まで風魔が立っていた場所は、深く穿たれ地面が抉れていた。
そこだけ雨上がりの如く水溜りができているところを見ると、どうやら水を使った攻撃をするらしい。
顔を上げる。前方は湖であり、水際には女性の地縛霊がいた。
水に濡れて長く垂れ下がる黒髪、所々腐り落ち骨と肉が剥き出しになっている肉体、その腐った肉体に張り付くぼろぼろの衣服、足首からは鎖が下がり深く水中へと伸びている。そしてその肉体に絡み付くように黒いガスのようなモノが揺らぎ蠢いていたが、良く見ると大量の人間の絶望した顔が浮かびあがっている。
『忘れない…忘れないで…私ハ忘レナイ…貴方を忘れない…貴方は忘れテシまウの…?』
「この娘……男に捨てられた性質か……。」
「らしいな…。」
風魔は眉根を寄せ、狭霧はフゥ、と溜め息一つ。
瞬間、気を抜いた二人の隙を衝くかのように女は水弾を放つ。
「やれやれ…、せっかちじゃな」
風魔は溜息雑じりに呟き、身を沈めつつ前方へと駆け、攻撃をかわすと同時に敵との距離を詰める。
「…っと、あぶ…」
危ない、と呟いて後方へと退こうとした狭霧であったが、直感的に素早くその場で屈むと、先程まで己の頭が在った所を物凄い勢いで数本のクナイが通過するのが見えた。
次いで、ぎりっぎり(強調)自分に当たらない所でゴーストの放った水弾が爆ぜた。
もとより顔色の悪い狭霧が、ちょっと蒼くなった。
後ろを振り返って見るに、美鈴が渾身の力を込めてスイングしたクナイが、なんとゾンビの身体を貫通してこちらに飛来したというわけだ。
私まで殺す気かね、貴殿は!?
と叫んでやりたかった狭霧であったが、自分はあくまで紳士。間違ってもそのような事は口に出さず、じと目で美鈴を見遣るだけに止め置いた。(紳士…?)
…流石の美鈴も、その視線に視線に気付いたのか、戦う手は止めずに狭霧を見、
「な、…何よ?その目は…」
「…………………いや、何も。」
「その間が気になるのよっ!」
その時、うがーと叫ぶ美鈴の背後から襲いかかろうとするゾンビの存在に気付いた狭霧が
「志村、後ろ後ろ!」
と叫ぶと、
「私は志村じゃねー!高虎よっ!」
と美鈴が切り返しつつ、背後の敵の首を刎ねる。
「………何やってんの?あの子達…」
その光景を目にした風魔が呆れたように呟きつつ、懐から符を取り出す。
そして口の中で呪を唱え…
「…さて、ちょっと眠ってもらうけど、良いよね?」
…風を切るように放たれた符が見事地縛霊の顔面に張り付いた。
すると、地縛霊は一切の動きを止めた。…風魔の導眠符奥義により眠ってしまったのである。
「おっ、成功した?ははっ、よっしゃー!フルボッコだぜー!」
「うわっ外道!正義の能力者がそんなんで良いの!?」
「靖…、…すごく…悪い顔です…」
笑顔でフルボッコなどと叫んだ風魔に、リビングデッドを倒し終えた二人が野次を飛ばす。
風魔もまたそれに反論を述べる。…ダークハンド奥義や呪殺符奥義で地縛霊を攻撃しつつ。
「ええい、やかましいっ!では導眠符などというアビリティを考えたTWに文句を申せば良かろう!というかこれが銀誓館の戦い方じゃボケー!何か文句あっか!……あ、倒しちゃった、てへっ☆」
「考えたとかTWとか言うなーーーっ!…って倒しちゃったのーー!?」
ぎゃーぎゃー騒ぎつつもアビリティを使用しまくっていた為に、地縛霊は目を覚ます事無く消え去った。
取り敢えず、三人で哀れな魂に救いがあらんことを祈った。

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「流石…、普段は5回に1回通常攻撃が当たれば良い方だがボス戦では一撃でオーバーキルするある意味悪運強い靖胤だ…。」
「う、うるさいっ!敵の回避率が高すぎるんだーっ!」
「ただ単にお前の運が無さ過ぎるのだろう…」
「そ、そんな事無いもん!」
「…っていうか…、…あなたって、そういうキャラだったんだ?」
「………………………Σはっ!?」
ついつい何時もの調子で騒いでいた風魔であったが、美鈴に言われ己の先程までの言動を思いだし、ようやく気付いたようだった。
だが、時既に遅し。
如何なる言い訳も通用する事は無いまでに、本性を曝け出してしまっていた。
風魔自身もそれはよーく分かっているようで、
「…コホン、美鈴殿。今のは忘れられよ。…良いな?」
「えー、どーしよっかな~?んー、忘れるのは無理だけどー、秘密にならしてあげてもいいけどね~?」
にまにまと嫌な笑みを浮かべつつ美鈴が答える。
「………助けて狭霧っ!」
「…無理だな……クス。」
「今笑わなかったかお前…!?」
「そのような事は無い。ああ、無い。大切な事なので二回言いました。」
「くっ…!………じゃあ、秘密にして?」
参った風魔は、不本意そうに美鈴にお願いする。
その言葉、待ってました!といったような笑顔で、凄く良い笑顔で(強調)、美鈴は風魔の肩に手を掛け、
「良いわよ。」
「えっ!?」
「ただし、条件付でね」
「やっぱりね!ええ、何となく分かってましたよ!」
ケッ!と自棄に陥る風魔に追い討ちを掛ける様に美鈴が条件を付きつける…と思いきや。
「じゃあまずその前に、アドレス交換して。」
「………はイ?」
「ほらほら、早くケータイ出す!赤外線で送るから、そっちのも送ってね。…君もよ、狭霧クン?」
脇で傍観を決め込んでいた狭霧は、急に話を振られ驚いた。
…今、フィボナッチ定数について考えていたところだったのだが。
無論、そのような考えは理解されるはずも無く。
「あ、届いた届いた。ありがとね。…へぇ、風魔サンも狭霧クンも、真面目に住所とか誕生日とか、編集してるんだね、意外。」
「……どんなイメージ?」
「っていうか、ケータイとか使わなそう」
「…ケータイもPCもiPodも、普通に使うし。」
「にひひー、イメージできねー♪」
けたけた笑いつつケータイを弄る美鈴を、何か言いたそうな目で見る二人であったが、肝心の条件とやらを聞いていない事に気が付いた。
「して…、条件とやらはどうなった?」
「うん、そうだね。二人には、ときどき私の買い物に付き合ってもらうわ。」
「……二人…って…え?…私も、か…?」
まさか自分にまで被害が及ぶとは思っていなかった狭霧は、再び驚いた。といっても、表情は依然として無表情である。
ちょっとだけ、主君の不甲斐無さを恨んだ。
…ゴメンネ、狭霧☆
主君の悪びれた風も無い笑顔が脳裏に浮かんだ。
一方その主君とやらは狭霧の隣で美鈴に反論しようとして撃沈している。
「待て待て、儂にも仕事があってだな…。…そう何度も買い物などに付き合ってやれるほどの時間が――」
「バラス」
「喜んでお付き合いさせていただきます、お嬢様っ☆」
凛々しく微笑んで見せてもやはりお姉様にしか見えないのだが。もしくは宝塚。
やがて、風魔をからかうのにも飽きたのか、美鈴が伸びをしながら歩き出した。
そして狭霧の横を通り抜ける瞬間、小声で、
「ねぇ、風魔サンってきっとドのつくSなんだろうけど……すごく苛め甲斐あるよねぇ~♪にゃははっ♪」
「………んー…んん…?」
どう反応を返して良いのか分からない狭霧であった。

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

日曜日。
「あ、ねぇ、これこれ、これ似合うと思わない?」
「あー?似合うんじゃねぇの…?」
紙袋を両手に提げた風魔が、気だるそうに答える。
今は和服で無く、洋装である。というか、美鈴に無理矢理着せられたのだが。
…白のYシャツにベージュのセーター。黒のジャケットに黒のジーンズ。黒のローファーに白いベルト。髪はいつものポニーテールではなく、三つ編みにしている。
…そして眠そうな顔でその隣に立っている狭霧は、いつも通り洋装だが、ゴシック服であった。これはおそらく、狭霧自身の趣味。ちなみに、手ぶら。
黒いYシャツにグレーのベスト。白ネクタイに白手袋。いくつものベルトがあしらわれたコートに黒いスラックス。黒いプラスチックフレームの眼鏡に黒の革靴。眼鏡からはシルバーのチェーンが垂れている。
……目立つ。ハッキリ言ってすごく目立つ三人組だ。
「…でも、その服、お前には大きすぎるんじゃないか?」
「何言ってるの?これ私のじゃないわよ」
「は?お前が何言ってんの…?」
「これあなたに似合うんじゃないかな、って☆」
「………………俺?いやいやいや、無理でしょ無理無理!」
「着てみなさいよ、ほらっ!」
「む、ムリッ、ちょっ、狭霧助けてっ!」
「…観念したまえ、靖…。」
助けを求む風魔を、無慈悲にも狭霧が後ろから羽交い絞めにする。
「ナイス、狭霧クン!よーっしそのまま試着室に直行よ!」
「承知!」
「承知じゃねー!離せェェェうわっ!?」
試着室のカーテンを美鈴が開け、すぐに狭霧が中へ風魔を放り込む。次いで服を放り込む。美鈴が素早くカーテンを閉める。
…素晴らしい連携である。
ちなみに、カーテンは美鈴の手によって固く閉ざされており、中から出る事は出来ない。
「ちょっ、出せよ!」
「駄目よ、着たら出してあげても良いけどね?」
「ぐっ…!…こ、こんな短いスカート穿けるかぁっ!」
「穿けるさ…、靖。お前ならできる…」
「変な信頼寄せんなっ!」
涙声で風魔が主張するが、当然聞き入れてもらえるはずも無かった。
泣く泣く着替えた風魔が
「………着替えた」
とこれまた涙声で言うまで、開けて貰えなかった。
「ではでは、御開帳~♪ …おおっ!」
「……ああ…靖…、何て事…」
「………うっ…うう…」
カーテンを開けると其処には……
…涙目で恥らっている風魔がいた。無論、女性服を着ている。
黒の短いティアードスカートにチェックのツインニット、そして黒のニーソックス。
「…く、当主たるこの儂に…なんたる仕打ち…なんたる屈辱っ…っていうか恥辱…!」
「…にひひ…♪ …恥らう姿も乙女ね…♪」
「ああっ…!靖…、何て事…っ!」
口では嘆いている狭霧だが、言いながらもケータイで写真をとりまくっていた。
「…綺羅姫ちゃんに送信っと。あ、あと、変態忍者にも送信。」
「この鬼畜野郎!外道!」
「良いわよ~、よしっ、店員さーん!これくださーい!」
「ちょ!?呼ぶな呼ぶな!店員さーん!買いませんからねー!?」
~♪~♫~♪~♪♫
「…お、綺羅姫ちゃんから返信来た…。……はは、ご愁傷様、靖。」
「な、何が!?」

~30分後~

「有難う御座いました~、またのお越しを~♪」

「いやー、いっぱい買っちゃったわね~♪」
「……そうだな…。…いや、中々に楽しめたよ…」
「良かったわ~♪」
はしゃぐ二人を余所に、傍で項垂れる者が一人…
…無論、風魔なのだが…服装は先程と違っていた。
白のブラウスに黒の細身のネクタイ。黒のベストに黒と赤のチェックのミニプリーツスカート。そしてやはりニーソックス、黒のシックな中折れハット。
「……お前らは良かっただろうよ……。…人を着せ替え人形にしやがって…!…っていうか狭霧まで着せてくるとはどういうことだ!」
「すまん、趣味に走った。」
実は風魔が今着ている服装は、狭霧の趣味である。
「だが、ほら、綺麗だぞ?」
世の女性方が喜ぶようなこの台詞も風魔にはフォローにならないのである。狭霧もそれを承知の上で言うのだから、性質が悪い。
靖胤は歩きながら、「嗚呼…俺、何処に向かってんだろ…」などと延々と悩むのだが、何時もの事なので気にしてはいけないのであった。

終わり。


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