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SilverRainの水忌・風魔(b32238)と葛葉・狭霧(b58633)のブログです。 このキャラ2人が日常会話や日記を綴る、というコンセプトなのでその辺よろしくお願いします。                                                                          +*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+* このサイトに掲載されている作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、作成を依頼したものです。  イラストの使用権は私(管理人)に、著作権は『寛斎タケル氏』『悠貴氏』『濃茶氏』に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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少しは前向きに生きれるでしょうか。

俺は彼女を幸せにしてあげる事ができるのでしょうか。

 



父よ、母よ、

靖胤は大事なモノを失いました。

母上様が私の目の前から姿を消し、
父上様がまだ御健勝で在らせられた頃。

自らが恋焦がれ、心の支えであった掛け替えの無い人が
この世から姿を消してしまいました。

彼女は名を 笑美瑠(えみる)と申しました。

名の通り、とても美しく笑う女性でありました。

彼女は何時も自分の顔にある雀斑(そばかす・夏日斑)を気にしておられました。

しかし、私は、それさえも美しいと思いました。

……彼女の事を深く愛してしまったのです。

はじめは唯の女中としか感じませんでした。

どうせこの女も俺の見た目を気味悪く思っているに違いないんだ。

俺の機嫌を取れば父への印象も良くなる、だからどうにかして俺の機嫌を取ろうと必死になっているんだ、と。

今思えばその考えの、何と浅はかで、愚かであった事か。

そんな私も次第に彼女に魅かれて行きました。

彼女は毎日、余程の事が無い限り私の傍に居ました。

悪い事をした時には、
時には姉のように、
時には母のように、
私を叱っておりました。

悲しい時には、
時には抱きしめ、
時には優しい言葉で、
私を慰めて下さいました。

そんな優しい彼女がおかしくなり始めたのは、
彼女と出逢ってから9年もの月日が流れた頃でした。

『私はもう嫌だ』
『こんな私に生きる価値は無い』
『どうかこの呪われた私に死を与えて下さい』
『どうか早く殺して殺してコロシテコロシコロシコロシテコロシテヤル殺してやる…!!』

悪鬼に取り憑かれてしまったのです。

それはとある家へと彼女を使いに送ったときの事でした。

その山中には昔から鬼が出ると言われており、
父上様も私も彼女を甚く心配して居りました。

当時から力の強かった私は、父上様に彼女の供をしたいと申し出ました。

父上様、貴方は渋々ながらも承諾してくれましたね。

靖胤は自分が認められたようでとても嬉しう御座いました。

私は直ぐに符と刀の用意を済ませると、意気揚々と彼女の元へと向かいました。

彼女はただ一言、
『あまり女性を待たせるものじゃないわよ』
と朗らかに笑って居りました。

………その後は、無事に使いを終えて、屋敷へと戻りました。

何故その時直ぐに彼女の異変に気付かなかったのかと、
今でも悔やんでおります。

彼女の瞳は赤く昏く淀んでおりました。

その数日後です。

何やら訳の分からない事を叫び、
顔の骨は人の形でなく隆起し、
狂ったように頭髪を掻き毟り、
邸内の至る所に爪を立て、
柱や壁に頭を打ち付け、
口は耳まで醜く裂け、
爪牙鋭く人を刺し、
力強く骨を折り、
瞳は血の色、
走り回り、
殺して、
死に、
死、

彼女は悪鬼と化しました。

すぐさま父上様が駆けつけて下さいました。

私も出来るだけ彼女を傷付けぬよう、全力を以って努めました。

しかし、まだ子供であった私には難しすぎたのです。

鬼の薙ぎをまともに受け、小柄であった私の身体は軽く宙を舞い壁へと強く打ち付けられました。

息が詰まり、呼吸が難しく、
血を吐き弱々しく倒れこみ、
離れようとする意識を何とか繋ぎとめる事で精一杯でした。

父上様は私を心配そうに振り返ろうとしましたが、其れ処ではない状況です。

意識を鬼へと戻すと、符を放ち、死物狂いで奮闘しました。

その時にはもう既に皆が分かっていたのです。

この鬼を屠るという事は、彼女を屠るという事だと。

鬼が死ねば、彼女も死ぬ、と。

子供ながらに私も気付いておりました。

そしてそれはしょうがない事なのだと諦めると同時に、
彼女を失いたくない、という諦めきれない気持ちもありました。

立ち上がろうにも其れができない私は、
符を使い無理矢理に立ち上がりました。

そして父上様に気をとられている鬼に、
…彼女に、最後の言葉をかけました。

『我は忌と為り鬼と為らん……鬼神招来・破邪滅殺…!』

代々伝わる最強にして最凶の術を私は放ちました。

この術からは何であれども逃れられません。

…これが、私から『彼女』へおくる、最後の言葉となりました。

…鬼の顔は、段々と鬼らしさを失い、
次第に、雀斑が現れました。

彼女の顔です。

鬼の呪から解放された彼女の顔は、
とても安らかなものでした。

微笑を湛えて、
彼女の身体は崩れ落ちました。

力を使い果たしてしまった私は、その身体を抱きとめる事すら適いませんでした。

彼女の身体が糸が切れたように倒れるのを、
霞む視界の中、ただただ、見つめていました。

その瞬間は、
スローモーションのように、
私にまざまざと見せ付けるかのようでありました。

薄れ行く意識の中、
父上様が必死に私の名を叫ぶ中、
私は思ったのです。

……嗚呼、何と美しい人なのだ…………。



目が覚めると、自分の布団の上でありました。

横を見ると、狭霧が嬉しそうな顔で私に抱き付いてきました。

『このまま…死んでしまうのではないかと…』

彼はとても珍しく泣いておりました。

私は彼を優しく抱き返し、微笑んで、生きているとだけ告げました。

それだけでもひどく安心したようで、
何度も何度も、必死に頷いておりました。

愛されてる、と苦笑した途端、
あの悪夢のような出来事が蘇りました。

彼女は、私をとてもよく愛してくれていた。

私は彼女を誰よりも、愛していた。

それなのに…、自分はそんな彼女を救う事が出来なかっただけでなく、
この手で殺したのだ。

この手で、この手で、
この小さな手で、この手が、この小さな手が彼女を……

汚れている
穢れている
この手はケガレテイル

私はバッ!と布団から立ち上がると、
痛む身体を無視して机へと向かいました。

机の上には常に懐刀が置いてありました。

その懐刀を取ると、鞘を抜き取り、
刃を手のひらへと押し当て一気に引きました。

赤い血が、流れたのを見、私はひどく安心感を覚えました。

俺の血は赤い。
水忌の血は魔の血などではない。

そこで再び昨夜の光景を思い出しました。

鬼の血、鬼の血は、赤かった。
今、流れている俺の血は、赤い。
…水忌の血は、鬼の血なのか。
所詮は忌まわれし一族なのか。
関わる者を死に追い遣る、呪われた一族なのか。

身体の奥深くに眠る魔が、ざわめいた。

……呑まれる……

私は咄嗟に刃を手首へと突き立てました。

背後で狭霧が息を飲む気配が伝わってきました。

私は狭霧の制止も構わずに、ぐりぐりと抉るようにして傷口を広げました。

刃を抜くと血が大量に溢れ出ました。

……次は、首。

私は首筋に刃を押し当てました。

その瞬間、父上様が駆けて来ました。

同じ呪われた血で繋がった親子だからこそ、
その異変に気付いたのでしょうね。

父上様に刀を取り上げられたと思った途端に、
強烈な眠気が私を襲いました。

私の意識は闇に呑まれてしまいました。

夢の中で思いました。

俺の血は魔の血だ。
死を呼ぶ呪われた血。
だから彼女は死んだのだ。
俺に近付いたから。
呪われた血に魅入られたから。
母上様だってそうだ。
もうこの世に居ないじゃないか。
……全て、この血のせいだ。
…この血がある限り、同じことは何度でも繰り返される。
俺の代で、食い止めてやる。
子だって作らない。
結婚もしない。
女に近付かない。
結婚や彼女が出来る事が幸せだと言うのなら、
幸せなんていらない。
俺は幸せになっちゃいけないんだ。
幸せになりたいと願ったら駄目なんだ。
誰も幸せにしてあげられないんだ。
神様は幸せにしてくれるなんて言うけど、
だったら神様に見放されてるんだ、きっと。
神様は平等なんてのも嘘だ。
それだったら何で俺はこんなにも苦しむの?
それは神様が、
神なんて馬鹿げたものは存在しないからだ。

…私はこの世の全てを呪いました。

父上様が逝き、私が風魔となりました。

もっと強くなろうと思いました。

そして強くなるために…、銀誓館学園へと入学したのです。

そこでいろいろな人と出会いました。

生まれて初めて、悪友と呼び合える存在も出来ました。

それらの出会いは全て、私を良い方向へと導きました。

苦しんでいるのは俺だけじゃなかった。

他人の弱い面に触れる度、そう感じました。

あるとき私は、一人の少女と出会いました。

優しい子です。

とても可愛らしい子です。

出逢った時はまさかこんな関係になるなんて思いませんでした。

彼女は私の掛け替えの無い恋人となりました。

愛しい人となりました。


7月4日、私は彼女に己の思いを手紙で伝えました。

その時はまだ、返事を聞くつもりはありませんでした。

…不安だったのです。

私は誰かを幸せにする事なんて出来ません。

幸せになることも出来ません。

きっと私と関わったからには彼女も……

そんな不安が何度も頭を過ぎりました。

私は考えました。

考えて、考えて、

とても簡単な事に気がつきました。

私は強くなるためにここへ来ました。

強くなって、彼女を護れば良いのです。

誰かを護れなかった時、何時でも私は弱かった。

強くあれば、きっと護る事ができる。

何も、不安になる事などないじゃないか。


7月7日、今度は自らの口で、彼女に思いを告げました。

離れ離れになった恋人たちが1年に1度の逢瀬を許されるその日、
私達は恋人となりました。

私は…水忌の血は幸せにはなれないかもしれない。

しかし、私は幸せになりたいと願っている。

幸せにしてあげたい人が居る。

神様…、なんてお願いはしません。

私が自分の力で彼女を幸せにします。

水忌の血がこの呪いから解放される日を夢見て、

どうか、私を見守っていてください、

父よ、母よ、

靖胤は、幸せになります。

幸せに、してみせます。

父よ、母よ、

靖胤は大事な者を得ました

 

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